259 / 1053

第7章の17

 部屋に帰るとすぐ、諒は酔っぱらった麻也を抱きしめてこう言った。 「麻也さんごめん。」 「何謝ってるんだよ。」 「全部俺が悪いんだ。特に真樹のこと…」 込められる諒の腕の力に、麻也は我に返る。 「俺こそごめん。ちょっと落ち込んだからって、酒に逃げたみたいになって…」 落ち込みの本当の理由は言えないが、 諒が触れてこないのをいいことに、黙っているしかない。 あんまり飲み過ぎないで…と言いながら優しく頭を撫でてくれた諒は、 ふとその手を止めると、また抱き締めてきて、耳元で囁いてくる。 「ところで、麻也さん、あの話、ほんと? 」 「えっ? 何の話? 」 「…俺と出会ってから、その…俺以外のヤツとヤってないって話…」 「えっ? 何? もう、バカ…」 いきなり言われて、麻也は真っ赤になる。 「えっ? 違うの? 」 びっくりして腕をほどいた諒の表情は曇っていて、しまった、と麻也は思った。 あわてて、 「違わないよ。前にも言ったじゃん。諒以外のヤツなんて意味ないって。」 「ホントに? 」 「ホントだよ。疑り深いなあ。」 「良かったあ。だってもー、打ち上げの時に、絶倫姫とか、 お持ち帰りの男が女がっていう話が入ってくるんだもん。 あと、前のバンドの時の…」 と言いかけて、ぴたっと止まる。 「いえ、出会う前、過去のことはいいです。」 「お互いさまだもんね。」 と、答えながらも、麻也は内心ハラハラしている。が、 「でもホントに嬉しい…麻也さんが本当に、俺に操を守ってくれてたなんて…」 と、また抱き締めて頬ずりしてくる。そして、 「俺もおんなじだから、安心してね♪ 」 「ええっ? 」 麻也も、嬉しくも、驚いてしまう。すると諒は、 「当然でしょ。」 「だって、その…」 「ああ、大翔の母親? だって、今の彼が本命なんだもん。 何かあった方が問題だったよ。」 (ほんとにそうだったんだ…) 麻也が黙ってしまったのを断ち切るように諒は、 「これからも、浮気はナシね。オンナも禁止。」 「諒もね。」 諒がそんなことしたら…もう、耐えられない…

ともだちにシェアしよう!