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第7章の17
部屋に帰るとすぐ、諒は酔っぱらった麻也を抱きしめてこう言った。
「麻也さんごめん。」
「何謝ってるんだよ。」
「全部俺が悪いんだ。特に真樹のこと…」
込められる諒の腕の力に、麻也は我に返る。
「俺こそごめん。ちょっと落ち込んだからって、酒に逃げたみたいになって…」
落ち込みの本当の理由は言えないが、
諒が触れてこないのをいいことに、黙っているしかない。
あんまり飲み過ぎないで…と言いながら優しく頭を撫でてくれた諒は、
ふとその手を止めると、また抱き締めてきて、耳元で囁いてくる。
「ところで、麻也さん、あの話、ほんと? 」
「えっ? 何の話? 」
「…俺と出会ってから、その…俺以外のヤツとヤってないって話…」
「えっ? 何? もう、バカ…」
いきなり言われて、麻也は真っ赤になる。
「えっ? 違うの? 」
びっくりして腕をほどいた諒の表情は曇っていて、しまった、と麻也は思った。
あわてて、
「違わないよ。前にも言ったじゃん。諒以外のヤツなんて意味ないって。」
「ホントに? 」
「ホントだよ。疑り深いなあ。」
「良かったあ。だってもー、打ち上げの時に、絶倫姫とか、
お持ち帰りの男が女がっていう話が入ってくるんだもん。
あと、前のバンドの時の…」
と言いかけて、ぴたっと止まる。
「いえ、出会う前、過去のことはいいです。」
「お互いさまだもんね。」
と、答えながらも、麻也は内心ハラハラしている。が、
「でもホントに嬉しい…麻也さんが本当に、俺に操を守ってくれてたなんて…」
と、また抱き締めて頬ずりしてくる。そして、
「俺もおんなじだから、安心してね♪ 」
「ええっ? 」
麻也も、嬉しくも、驚いてしまう。すると諒は、
「当然でしょ。」
「だって、その…」
「ああ、大翔の母親? だって、今の彼が本命なんだもん。
何かあった方が問題だったよ。」
(ほんとにそうだったんだ…)
麻也が黙ってしまったのを断ち切るように諒は、
「これからも、浮気はナシね。オンナも禁止。」
「諒もね。」
諒がそんなことしたら…もう、耐えられない…
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