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第7章の21
次の日は物件の下見ということだったが、もう物件はひとつに絞られていて、
それの確認といったところだった。
「もう時間もないので、とりあえずこの物件ということで…」
不動産屋の姿もなく、説明してくれるのは須藤で、
スタイリストの三田が同行してくれていた。
3LDKのやや古いマンションの一室だが、
オーナーである前の住人も音楽関係者だったということで、
2部屋に防音設備がなされている賃貸物件だ。
「防音、ていうのがいいね。」
と麻也が言えば、諒が、
「そうだね。他の使い勝手がどうでも、結構長く住んじゃうかもね。」
と言ったところで、須藤は三田に、
「じゃあ三田さん、こんな感じの部屋なんで、家具とか食器とか、
最低限のセレクトお願いします。」
「わかりました。麻也さん、諒さん、ざっくり、使ってほしい色とかありますか? 」
「あ、俺は別に…こだわりとかないヒトなんで、諒の好みでいいです。」
「俺は家具は白がいいんですけど…特にソファ。
でも、ベッドルームは落ち着いた色がいいのかな…」
傍らに控える三田のアシスタントがメモしていく。
「あと、食器はほんと最低限でいいです。お気に入りが今の家にあるんで。」
「俺も同じく。」
「まだ、時間があるから、俺たちもついて行った方がいいのかな? 」
諒がそういうと須藤が、
「あ、それより、木内さんとこに曲の打ち合わせに行って下さい。」
2人は頭を抱え込む。
「えーっ! だってまだ何もできていないのに…」
「だから少しでも進めてほしいんです。明日は4枚目のシングルの発売日なんですから。」
その横を、失礼します、と言って三田とアシスタントがすり抜けていく。
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