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第7章の23
須藤も含めて3人になってしまうと諒が、
「何も思いつかない~へのへのもへじでも書くしかないかも…」
思わずみんなで吹き出しながらも、麻也は、
「でもこんな風に時間作ってもらえるだけありがたいよ。
こんなに静かなところで落ち着けるって、最近なかったんじゃない? 」
「そういやそうだね。」
「アルバムコンセプトか…毎日がめまぐるしい中、何だろね? 」
「やっぱ3枚めで『愛』でしょう。」
「諒ったらストレートだなあ…」
「1枚目が『背徳の愛』で売れなかったし、
2枚目は売れたけど結局『ディスグラ見本市』になっちゃったしね。
それにストレートな方が、麻也さんも書きやすいから売れるでしょ。」
最後の言葉に麻也は少し引っかかったが、まあ、渡された紙に、少し大きめに「愛」と書いてみた。
というのは、周囲に言われればそうかと思うのだが、麻也の字は線が細く、
でも流れるような字なので、「お姫様の字」と言われているからなのだ。
大きく書いても迫力は出ない。
一方の諒も、麻也とは違って少し角張った字だが、
線が細くて小さいので「神経質な女の子の字」と言われている。
という訳で、フロント2人の字はやや読みづらい。
一方のリズム隊は、真樹は丸文字っぽい元気な字で読みやすいし、
直人に至っては非の打ちどころのないような美しい字で、みんながほめる。
「字は性格が出るよね…」
とみんなに言われるが、そうすると諒は…? と、麻也はちょっと不安になる。
(でも、確かに繊細なところは繊細だよね…大切にしてあげなきゃだな…)
そう麻也は思いを新たにする。
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