266 / 1053
第7章の24
「歌詞は少し考えてはいたんだけどね…
こんなことならノート持って来…てないか。やっぱり。
バタバタしてたから忘れちゃったよ。」
と言いながら、「愛」の横に「恋愛」と付け加えてみた。
「よくみんな広い意味での愛をうたいますとかいうけど、
別に恋愛にしぼりこんでも良くない? 俺たちは。
今、こんな気持ちだから。こんな気持ち、人生ではもう二度と持てないかもしれないよ。」
「ほんとにそうだねえ。もう、麻也さんたら…」
そう答えた諒の瞳はキラキラと輝き始め、
「ああ、今、何か降りてきた気がする。」
と、冗談めかして両手で受け止めるしぐさをする。
そして自分の紙に何ごとか書き始める。
麻也も別の紙に、今の気持ちを書いてみる。
幸せいっぱい、でもそれだけに、不安、この幸せがいつまで続くか不安。
弟の大反対。だけどそれだけに いっそう燃える…
「んー、この『いっそう燃える』っていいねえ…」
「やだ、見てたの? 」
「ふーん、でもそれって麻也さんの本音だよね。」
「やだな、もー…」
麻也は耳まで赤くなる。
「あ、これ借りてもいい? 何だかすごく気に入っちゃった。
どうせ同じテーマでも、俺たちそれぞれ書き方が違うからいいでしょ? 」
「もー、諒ったらぁ…」
と、そこで軽く咳払いがした。
「あ…須藤さんいたんだ…」
「アツアツなところすみませんが、そろそろ食事にしませんか? 」
照れ隠しに諒は、
「あー、じゃ悪いけど、お弁当買ってきてもらえますか? 何かノって来ちゃった。」
そして、テーマとわずかばかりの歌詞の原案を残してスタジオを出ると、
次はラジオの収録だった。
ともだちにシェアしよう!