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第7章の29
「直訴って…」
「俺たちは諒の離婚ぐらいで人気が落ちるバンドですか?
そんなアイドルバンドですか、って…」
「…」
「そしたら社長は、せめてあと5才年取ってれば違ったんだが…って答えてた。
若いからアイドルみたいにも見えてしまうと。
もちろんロックスターというにはまだまだだと。」
麻也と諒には言葉もない。
「あと真樹は…麻也さんの代わりに新居のシーンに出られないか、とも頼んでたよ。」
「えっ? 」
「その…諒に男の恋人の設定が必要なら、自分じゃだめなのか、って。」
麻也は複雑な気持ちだった。
そんなに自分が諒の恋人であることは不名誉に思えることなのか…
「社長は、もちろん麻也さんじゃなきゃだめだって言ってたけどね。
真剣な2人を利用してすまないともね。」
「真樹はなんて…」
「わかりましたって、答えるしかなかったよね。」
しかし直人は、こうも続けた。
「でも、俺たちリズム隊もとまどってるってこともわかってほしいんだ。
毎日仕事だけでもジェットコースターみたいなのにさ、
そりゃ二人と違ってソングライティングはないけど、
諒は結婚して子供生まれて離婚して、すぐにその後に恋人がいて…
相手が女でもびっくりなのに麻也さんでしょ。
バンド内の不良と優等生がくっついたようなもんでもあるしさ。」
「…」
「俺はあと、ファンとか関係者とか世間とかを考えるだけでいいけど、
真樹は麻也さんのことが不安で仕方がないんだよ。
悪いけど諒はバツイチだし、子供もいるし、男だし。
兄の幸せを考えたら、確かに不安になるよ。」
麻也と諒はうなだれるばかりだった。
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