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第7章の33
2人がどうにか部屋を整え、キャンペーンとリハーサルを繰り返しているうちに、その日はすぐにやってきた。
「おじゃましまーす…」
テレビのドキュメンタリー番組「情熱ジャパン」の取材クルーがやってきたのだ。
直前の打ち合わせ通り、それぞれの作曲部屋でそれぞれが作曲しているシーン、
リビングで歌詞について打ち合わせするシーンをまず撮影した。
どこが使われるかわからないので、クルーを迎える時から2人は、
さりげなくボディータッチはしていた。
が、なかなかキスするタイミングがなく、まずはリビングでの打ち合わせで、
ちょっとしたことが決まった時に、
「ねえ~…」
と言いながら麻也が手を伸ばし、諒の手を取ったところで、諒が麻也を抱き寄せ、
愛しくて仕方がないという風に唇に二度キスをした。
それを映してカメラは止まり、
「これ、本当に事務所的にOKなんですか? 」
とディレクターが尋ねてきた。
「OKです。」
と2人が答えると、陰から見守っていた須藤も、
「大丈夫。OKです。こういうバンドですから。」
と断言する。
そういうものなのかなあ、と首をかしげるディレクターに、須藤は、
「ライブで見慣れているファンや若い人は喜ぶので、親世代の方にもウケると思いますよ。
何せ世紀末ですからね。そういう時代なんですよ。」
その言葉にもディレクターは、半信半疑だ。
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