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第7章の35

 次の日はぎりぎりまでリハーサルをして、この前と同じ会場のイベントに臨んだ。  まだまだひよっ子なので、出番は最初だが、 カメラが共同の楽屋にも入ってくるので目立つ。 コメントを求められたりもして、落ち着かない。  それでも、ステージに飛び出していくと、 全部が自分たちの客かと思うくらい歓声が大きい… 「ディスティニー・アンダーグラウンドです! よろしくっ! 」 最初から「ディスティニー」で飛ばしていく。 麻也もはじけて、諒にまとわりつき、軽くキスももらう。 これもカメラでとらえられているが、気にはしていない。 真樹とも背中合わせになって諒は歌う。 真樹もライブ中は休戦で、笑顔だ。 直人が客をあおっているのも麻也の視界に飛び込んでくる。 いつもの曲では、諒と麻也は濃厚ディープキス…  5曲あっという間に駆け抜けた。 自分たちはライブバンドだと麻也もつくづく思う。  打ち上げにまでカメラはついてきたが、一次会だけだったので、 麻也と諒は早々に自宅に引き上げた。  が…  その帰り際に、須藤に念を押されたのである。 「では、麻也さんも諒さんも、明日は遅刻しないで下さいね。」 「はい? 」 …札幌と福岡でキャンペーンだというのである…  リビングのソファに座って脚を投げ出しながら麻也は、 「明日、俺、札幌にいるなんて…聞いてないよ…」 地方キャンペーンで、メンバー2人ずつで回るのだ。 「でも、前々から言われてたんだよね、きっと。 俺たちが聞いてなかっただけで…しくしく…」 「麻也さん、直人と浮気しないでね…フロントを分けたなんて言うけどさあ、 絶対陰謀だよ…」 「諒こそ、真樹に手を出さないでね。兄弟食べ比べなんてしないでね。」 「何それ。」 諒は目を丸くする。そして、麻也の両肩に手を置いて、見つめながら、 「そういうこと言うから絶倫姫とか言われるんだよ。 麻也さん、めっ。」

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