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第8章<略奪愛の天使>の1
地方のキャンペーンの前半戦が終わった頃、
例のドキュメンタリー「情熱ジャパン」は放映された。
真樹のたっての希望で、仕事終わりの0時過ぎに、録画したものを真樹の部屋で4人集まって見ることになったのだった。
リビングのテレビの前で、麻也と諒は恥ずかしくて仕方がない。
が、なんとなく全員が正座してしまったところで、真樹がリモコンの再生ボタンを押す。
番組が始まる。
まずは2人が楽器に向かって作曲しているシーンから。
「おーっ。」
思わず4人は歓声をあげてしまう…
<このバンド、ちょっと変わっている。
曲を作る2人、ボーカルの諒とギターの麻也が一緒に暮らしている…のだが? >
そこで武道館のライブの諒のアップに切り替わり、バンド全体が映しだされると、バンドの紹介のナレーションが入る。
<…今、若者を中心に絶大な支持を受けつつあるバンド・ディスティニー・アンダーグラウンド。
同性愛、社会批判、ゆがんだ純愛などを歌う、いかにも世紀末らしい、でもどこかピュアで勢いのあるバンドだ…>
そこで、ステージ上での、諒と麻也の濃厚なキスシーンで、
次の場面に切り替わる…と…
新居のリビングで、笑顔の諒と麻也が作詞ノートを前にいちゃいちゃし、そして、二度の唇を重ねるキス…
<…やっぱり、世紀末のバンドは変わっていた…>
「上手いナレーションだねえ。」
直人は感心していたが、真樹は目が点になっているし、それを見て、麻也と諒はひやひやしている。
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