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第8章の3

 缶ビールで乾杯すると、真樹は、 「なかなかいい切り口だったんじゃない? ねえ、麻也さん? 」 真樹は許してくれてはいなかったのだ。麻也はがっかりした。 しかし諒は、 「でも、真樹には悪いけど、あのさわやかなまとめ方に俺は感謝してる。 麻也さんと俺のこと、みんなに披露できた気がして、 何か嬉しかった。」 そう言われれば、何となく麻也もどこかすがすがしいものを感じていた。 しかし直人は、 「俺も、何かいいまとめ方だったと思うし、ファンには上手く伝わったと思うんだよね。 ただ…業界のイジワルな方たちには何言われるか、っていうか、 ヘンな噂にならなきゃいいなとは思った。」 「ま、ディスグラを知らない人にもインパクトは与えられたんじゃないの。」 と、諒が答えると、真樹はつまみのナッツに手を伸ばしながら、 「でも、つくづくメディアって怖いよね。って、最近売れてきて思うけど。 武道館にあれだけ入るってことは、宣伝がどれほど広がってるかってことで、 ありがたくも怖いよね。」 「そんなに宣伝を受けても応援してくれない人は、まあ、好きになれない、ならいいけど、 嫌いとか、ねたみやそねみもあるかもしれない…」 と、、直人が言いさすと、みんなこの後すぐに出るかもしれない離婚報道が思い浮かんでしまい、黙り込む。  そんな空気を断ち切るように真樹が、 「はい、麻也さんもナッツをどうぞ。」 と、皿を差し出すと、直人が、 「真樹、もうその『麻也さん』てのやめたら?  俺はあの元気な『兄貴ぃ』が聞きたいよ。」

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