282 / 1053

第8章の4

 すると諒も、 「…福岡のホテルの部屋で、俺にあんなに根掘り葉掘り訊いたクセに、 まだ許してくれないの? 」 「えっ? 本当? 」 麻也は真っ青になった。 「そうだよ。どっちから告白したの? とか、いつからつきあってるの? とか、 エッチはしてるの? とか…」 「えーっ!そこまでーっ!? 」 直人と麻也は思わず叫ぶ。が、 「あ、でも、俺も知りたいかも。」 「直人っ! 」  するとどうしてか、真樹はこんなことを話し始めた。 「そういやみんな、麻也さんの名前の由来って知ってる? 」 「ううん。」 「実は麻也さんと俺の上には姉がいてさ…」 麻衣(まい)と名付けられ、溺愛されたその子は1才足らずで原因不明の突然死をしてしまったのだという。 両親のショックは並大抵のものではなく… 「だから特にオフクロが、『次の子が生まれたら、麻矢(まや)と名付けて、絶対に死なせない』って誓ったんだけど… そしたら次は、顔はそっくりだったけど、男の子でさ…」 それであわてて男っぽく、「也」の字にして名付けたのだという。 そして、古い習慣に従って、厄除けに、2才まで女の子の服を着せて育てたと… 「その気持ち、わかるよ…」 という、諒の何気ない言葉が、ちょっと麻也にはひっかかる。

ともだちにシェアしよう!