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第8章の4
すると諒も、
「…福岡のホテルの部屋で、俺にあんなに根掘り葉掘り訊いたクセに、
まだ許してくれないの? 」
「えっ? 本当? 」
麻也は真っ青になった。
「そうだよ。どっちから告白したの? とか、いつからつきあってるの? とか、
エッチはしてるの? とか…」
「えーっ!そこまでーっ!? 」
直人と麻也は思わず叫ぶ。が、
「あ、でも、俺も知りたいかも。」
「直人っ! 」
するとどうしてか、真樹はこんなことを話し始めた。
「そういやみんな、麻也さんの名前の由来って知ってる? 」
「ううん。」
「実は麻也さんと俺の上には姉がいてさ…」
麻衣(まい)と名付けられ、溺愛されたその子は1才足らずで原因不明の突然死をしてしまったのだという。
両親のショックは並大抵のものではなく…
「だから特にオフクロが、『次の子が生まれたら、麻矢(まや)と名付けて、絶対に死なせない』って誓ったんだけど…
そしたら次は、顔はそっくりだったけど、男の子でさ…」
それであわてて男っぽく、「也」の字にして名付けたのだという。
そして、古い習慣に従って、厄除けに、2才まで女の子の服を着せて育てたと…
「その気持ち、わかるよ…」
という、諒の何気ない言葉が、ちょっと麻也にはひっかかる。
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