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第8章の5
「で、その次こそは女の子を、っていうんで、麻紀(まき)って名前を用意してたら、
りりしい俺が生まれちゃってさ。今度も『樹』の字にして名付けようとしたら、
オフクロの方のじいちゃんが、『悲しみを引きずり続けるのは良くないし、男女がわかりづらい名前も良くない』
って言って、今の真樹(まさき)にしてくれたんだ。」
「じゃあ、俺が大変な目に合うのも名前のせいかなあ? 」
と、麻也が何気なく言うと、諒はがっかりして、
「麻也さん、俺もその『大変な目』に含まれるの? 」
「含まれるんじゃねえの~…」
すかさず真樹が、まぜっかえすように言う。
が、しかし、
「でもさ、何となく、兄貴は姉貴の分も生きているような気がするって、家族は思ってるよ。
その分、生き急いでる気もするから心配だけど。」
「あれ、『兄貴』に戻ってるよ。」
直人が指摘すると、真樹は、
「もういいよ、『兄貴』で。それでは諒子お姉さん、兄貴のことよろしくお願いします。」
すると麻也は、
「真樹、お姉さんじゃなくてお兄さんだよ。」
…一瞬、みんなフリーズする。
が、いち早く直人が、
「えーっ! 衝撃のカミングアウト! 」
真樹は、
「何となくそんな気はしてたけど…えーっ! 」
真っ赤になった諒は、
「もういいから早く寝よーよっ! 」
と立ち上がる。
それを合図に、そのあたりのものをみんなで片づけて、真樹が毛布を配り始める。
自然に麻也が壁際で、諒がその隣だった。
ショックがさめやらない真樹は、
「そこの新婚サン、そこでおっぱじめないでよ! 」
しゃくにさわった麻也は、
「見たいならそう言えばいいじゃん! 」
「絶倫姫、降臨! 」
…直人はすでに、毛布を頭からかぶっていた…
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