283 / 1053

第8章の5

「で、その次こそは女の子を、っていうんで、麻紀(まき)って名前を用意してたら、 りりしい俺が生まれちゃってさ。今度も『樹』の字にして名付けようとしたら、 オフクロの方のじいちゃんが、『悲しみを引きずり続けるのは良くないし、男女がわかりづらい名前も良くない』 って言って、今の真樹(まさき)にしてくれたんだ。」 「じゃあ、俺が大変な目に合うのも名前のせいかなあ? 」 と、麻也が何気なく言うと、諒はがっかりして、 「麻也さん、俺もその『大変な目』に含まれるの? 」 「含まれるんじゃねえの~…」 すかさず真樹が、まぜっかえすように言う。 が、しかし、 「でもさ、何となく、兄貴は姉貴の分も生きているような気がするって、家族は思ってるよ。 その分、生き急いでる気もするから心配だけど。」 「あれ、『兄貴』に戻ってるよ。」 直人が指摘すると、真樹は、 「もういいよ、『兄貴』で。それでは諒子お姉さん、兄貴のことよろしくお願いします。」 すると麻也は、 「真樹、お姉さんじゃなくてお兄さんだよ。」 …一瞬、みんなフリーズする。 が、いち早く直人が、 「えーっ! 衝撃のカミングアウト! 」 真樹は、 「何となくそんな気はしてたけど…えーっ! 」 真っ赤になった諒は、 「もういいから早く寝よーよっ! 」 と立ち上がる。 それを合図に、そのあたりのものをみんなで片づけて、真樹が毛布を配り始める。  自然に麻也が壁際で、諒がその隣だった。 ショックがさめやらない真樹は、 「そこの新婚サン、そこでおっぱじめないでよ! 」 しゃくにさわった麻也は、 「見たいならそう言えばいいじゃん! 」 「絶倫姫、降臨! 」 …直人はすでに、毛布を頭からかぶっていた…

ともだちにシェアしよう!