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第8章の6

 次の日は、日曜日。  メンバーはみんなカン違いしていたのだが、最初の仕事はラジオの生放送だったのだ。  スタイリストの三田が用意してくれた、普段着っぽい、でもちょっとオシャレな衣装で、 CDショップのサテライトスタジオで、ファンの視線を浴びる予定…  事務所の会議室で着替えが終わると三田が、 「…あのう…これ…」 と、麻也と諒に、それぞれ、小箱に入ったプレゼントをくれた。 「今開けてほしいんだけどな…」 と言われたので開けてみると、お揃いの、蛇が巻き付いている絵柄の、 太めの男物の指輪だった。 「薬指にどうかと思って…昨夜あのテレビ見てて二人に何か足りないなと思ったら、 お揃いのリングかなと思って…余計だったらごめんなさいね。」 2人は喜んで、さっそく薬指にはめてみた。 「かっこいいね。今日の衣装にも合うし。三田さん、本当にありがとう。」 麻也は手放しの喜びようだったが、諒はちょっと違ったようだった。 それでも礼を言い、その指輪をはめると、みんなと一緒に会場行きのワゴン車に乗り込んだ。 「諒、どうしたの? 」 「祝ってもらえて嬉しいけどさ、こういうものは俺、やっぱ自分で用意したかったなって思って… うかつだったけど…」 「あ、じゃあ、右手の小指用の、買ってよ。薬指だとギター弾く時じゃまだから… 右手の小指ならずっとつけていられるし。」 すると諒の表情は見る間にほころび、 「じゃあそうしよっか。少し先になるけど、用意するね。 そうだ、今はめているのは目立つから、待ってるファンに2人で披露しよっか? 」 「あー、あの、女優さんとかが、ずん、てやるヤツ?」 「そうそう、それ…」 そして2人で寄り添って、左手の甲をみんなに向けて、ずん、とやる練習をした…  会場に着くと、黒山の人だかりだった。  

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