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第8章の9

「だから大阪では、2人の仲がいいところをめちゃめちゃアピールしてほしいんです。」 「わかりました。でも諒、いつでも諒の方から俺をリードしなきゃだめだよ。」 「あ、ああ…」 諒の声は元気がなく、その表情もどこかうつろだった… その次の日は、テレビのワイドショーまで、少しの時間ではあったが、あちこちの番組で騒がれていた。  新進気鋭の美形バンドのボーカルが、23才で離婚、子供もアリ…なんていうのは格好のワイドショーネタだった。  女性週刊誌にまで取り上げられていた。  事務所の電話はファンとマスコミからで、パンク寸前になっていた。  前の晩、曲作りで遅かった二人は昼ごろ起きだして、何気なく麻也がテレビのスイッチを入れた。  ちょうどワイドショーの時間帯で、大きく諒の写真が載ったスポーツ紙が映し出されていた… <『ディスグラ諒、離婚していた! 子供もいた!』>  元妻は、現在は別の男性と婚約中…画面の中のキャスターの声を、麻也はうわの空で聞くことになってしまった。  いざこうなってしまうと、ショックで何も言えない。  誰にも幸せではなかった結婚…  そして、その原因は自分にもあるかもしれないし、 何より、このトラップのようなリークも自分のせいかもしれないのだ。  そう思うと、諒の視線を感じながらも、麻也は絶句していたが… どうにか、何気ない風を作って、 「諒、ちゃんと指輪はめてる? 」 「ん? あ、ああ…」 「今日も三田さんの服着るんだから…」 「大丈夫。あれから外してないよ。」 「今日の撮影でも、ずん、やっちゃおうか? 」 すると諒はかすかに笑った。言った本人の麻也も切なくて笑えなかった。 キスをねだることもできなかった。

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