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第8章の14

 2人はややしばらく抱き合っていたが、空気を換えたいと思った麻也が、 「諒、何か飲もうよ。初夜らしく、シャンパンでも開けよっか? 」 と、ベッドから降りた。諒は笑顔で見ていてくれたが、麻也は、 「でも、疲れちゃったから、チョコとかも食べたいよね…」 「もらったプレゼントの中にチョコくらいないかな? 」 「じゃあ、須藤さんの部屋を直撃だ! 」 まだ着替えもしていない二人は、仕事用のスーツのまま、 電話も掛けずに直接部屋に向かい、ピンポンを鳴らした。  突然のことでびっくりして飛び出てきたのは鈴木で、何事かうろたえている。 が、麻也は、 「プレゼントの中にチョコがあったら欲しいな、と思って… って、そういえば、プレゼントとか手紙とか、俺たちも見たいんだけど。」 「いやあ、それは…」 と、中の須藤の様子を気にして、ちょっと待ってください、と言って鈴木は部屋に戻った。 すると、今度は須藤が出てきて、チョコはありません、とだけ言う。 「いや、それだけじゃなくて…」 「じゃあ、突撃しちゃうよん。」 「だめですっ! 」 制止を振り切り、諒は部屋の中にずかずかと入っていく。麻也もそれについていった。 プレゼントやラッピングの向こう、ツインの奥の方のベッドの上に便箋やカードの山が4つあったので、 麻也は手近な山を一つ取って、目を通した。 それには、 ―親愛なる魔夜姫へ。      …略奪愛ですか?  「何これ…」

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