292 / 1053
第8章の14
2人はややしばらく抱き合っていたが、空気を換えたいと思った麻也が、
「諒、何か飲もうよ。初夜らしく、シャンパンでも開けよっか? 」
と、ベッドから降りた。諒は笑顔で見ていてくれたが、麻也は、
「でも、疲れちゃったから、チョコとかも食べたいよね…」
「もらったプレゼントの中にチョコくらいないかな? 」
「じゃあ、須藤さんの部屋を直撃だ! 」
まだ着替えもしていない二人は、仕事用のスーツのまま、
電話も掛けずに直接部屋に向かい、ピンポンを鳴らした。
突然のことでびっくりして飛び出てきたのは鈴木で、何事かうろたえている。
が、麻也は、
「プレゼントの中にチョコがあったら欲しいな、と思って…
って、そういえば、プレゼントとか手紙とか、俺たちも見たいんだけど。」
「いやあ、それは…」
と、中の須藤の様子を気にして、ちょっと待ってください、と言って鈴木は部屋に戻った。
すると、今度は須藤が出てきて、チョコはありません、とだけ言う。
「いや、それだけじゃなくて…」
「じゃあ、突撃しちゃうよん。」
「だめですっ! 」
制止を振り切り、諒は部屋の中にずかずかと入っていく。麻也もそれについていった。
プレゼントやラッピングの向こう、ツインの奥の方のベッドの上に便箋やカードの山が4つあったので、
麻也は手近な山を一つ取って、目を通した。
それには、
―親愛なる魔夜姫へ。
…略奪愛ですか?
「何これ…」
ともだちにシェアしよう!

