295 / 1053
第8章の17
すると諒はものすごく嬉しそうな顏をして、
「本当? ホラホラ良く見て…」
と言いながら、いつしか麻也の顎を右手でとらえ、優しくキスしてくる。
「でも麻也さん、最初っからって、何? 」
「あ…」
「もしかして麻也さん、俺が告白する前から俺のこと、
かなり気にかけてくれてたの? 」
麻也は照れてしまって、
「いや、あのっ、諒の手を握ってのアプローチが…」
「おやおやぁ…? 」
「もうっ、だって諒、初めて見たのがステージの上の諒だから、それこそ反則だよっ!
カッコいいから意識しちゃうじゃん。初めての打ち合わせだって向かい側だったし。
それに、悪魔の魔法だって…」
すると諒は、切なそうな表情で、下を向き、
「…あれは本当にヤバかった。真樹たちに提案された時は嬉しさを押し殺すのに必死で…
でも、たとえ練習スタジオでも、麻也さんに初めてキスできた時は、
嬉しくて、どうなることかと思った…」
「もー、初めてなのに、諒ったら舌入れてくるんだもん…でも…」
「…でも、何? 」
「その後のフォローが、うぶな女の子相手みたいだったけど、
何か優しかったから、つい…」
「つい…? 」
諒の顏がいつしかほころんでいる…あの時のように…
「もう、知らない! 」
麻也が照れるあまり向こうを向くと諒は優しく抱き締めてくれた。
「でも、もう…あの時とは違う。俺たちもう、両思いなんだよ…ね、麻也さん…」
2人の間には障害は何もない…そんな気がして、麻也も諒にに向き直ると抱きついていた。
でもその時、麻也の頭の片隅には、「略奪愛」という言葉も忍び寄ってきていたけれど…
「麻也さん、ベッドに入ろっか。疲れたでしょ。」
意外にも諒は穏やかに誘ってくれた…
ともだちにシェアしよう!