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第8章の17

すると諒はものすごく嬉しそうな顏をして、 「本当? ホラホラ良く見て…」 と言いながら、いつしか麻也の顎を右手でとらえ、優しくキスしてくる。 「でも麻也さん、最初っからって、何? 」 「あ…」 「もしかして麻也さん、俺が告白する前から俺のこと、 かなり気にかけてくれてたの? 」 麻也は照れてしまって、 「いや、あのっ、諒の手を握ってのアプローチが…」 「おやおやぁ…? 」 「もうっ、だって諒、初めて見たのがステージの上の諒だから、それこそ反則だよっ! カッコいいから意識しちゃうじゃん。初めての打ち合わせだって向かい側だったし。 それに、悪魔の魔法だって…」 すると諒は、切なそうな表情で、下を向き、 「…あれは本当にヤバかった。真樹たちに提案された時は嬉しさを押し殺すのに必死で… でも、たとえ練習スタジオでも、麻也さんに初めてキスできた時は、 嬉しくて、どうなることかと思った…」 「もー、初めてなのに、諒ったら舌入れてくるんだもん…でも…」 「…でも、何? 」 「その後のフォローが、うぶな女の子相手みたいだったけど、 何か優しかったから、つい…」 「つい…? 」 諒の顏がいつしかほころんでいる…あの時のように… 「もう、知らない! 」 麻也が照れるあまり向こうを向くと諒は優しく抱き締めてくれた。 「でも、もう…あの時とは違う。俺たちもう、両思いなんだよ…ね、麻也さん…」 2人の間には障害は何もない…そんな気がして、麻也も諒にに向き直ると抱きついていた。 でもその時、麻也の頭の片隅には、「略奪愛」という言葉も忍び寄ってきていたけれど… 「麻也さん、ベッドに入ろっか。疲れたでしょ。」 意外にも諒は穏やかに誘ってくれた…

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