299 / 1053

第8章の21

「まあ、いいにつけ、悪いにつけ、話題になったのはいいことだと思わなきゃな。」 と、社長は言い、そして、あとはここで一発、アルバムとツアーだ!などと言われてしまう。 しかし、この日はこの報告で帰宅できるので、2人はまた曲作りに励むつもりだ。 「明るいうちに帰ってこられたよ、麻也さん! 」 「ほんとだ!すぐに諒に押し倒されない日なんて初めてだ! 」 すると諒は、 「人聞き悪いなー、いちおーシャワーの後…でもない…か…な? 」 「ほら…」 「でもぉ、ご希望とあらば、今ここで押し倒して差し上げ…」 「いや、いいです。それより曲作りしようよ。真樹も直人も待ってるんだから。」 でも、諒は、麻也のシャツの袖を引っ張って、 「でも、昼間の麻也たんも食べたいな…」 麻也は少しイラっとして、 「ゆうべ、あんなにしたのに?! 諒は俺とツアーに行きたくないの? 」 「い、行きたいです…」 「じゃあ、曲作ろ。俺、曲をすり合わせてる時の諒の表情が好きだなあ。」 「そ、そう? じゃあ、作ろっかな…」  どうにか諒をなだめすかしたところで、2人は各々の部屋に分かれて、楽器に向かう。 が、一人になると、麻也を睡魔が襲う… 諒のおかげで、薬は飲まなくても眠れるようになったが… それで、余った薬はクローゼットの奥にしまったくらいなのだが… その一方で、諒の求めは嬉しくも激しかったので、日ごろの激務の寝不足に拍車がかかり… 「麻也さ…あー、寝てるじゃん…」 いつしか諒が部屋にいた。 「諒のせいで寝不足なのっ! 」 すると不満げに諒は、 「それは麻也さんの魔性のせいじゃん。自業自得だよ…」 そういうのも自業自得っていうのだろうか…と麻也は思い、諒に当たってしまう。 「諒に自制心が薄いのが悪いんじゃん…」 すると痛いところを突かれてしまった。 「で、俺の仮歌入れは何曲まで必要なんですか? 」 「ギクっ。いやあ、その…」 「じゃあ、仮歌はまだですね。」 「うん、もう、自分で入れてそっち持ってくよ。」

ともだちにシェアしよう!