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第8章の22

 諒が出て行ったところで、今度こそはギターを持って音を作っていく。 歌詞はまず原案を諒に見せて相談してから仮歌をのせたかったのだが、 さっきああ言ってしまったので、自分で歌まで入れる… …意外と曲にしっくりこない歌詞だった… これはかなり諒の手直しが入るだろう…  ドアがノックされても、返事をするのも面倒くさい。 「麻也さん、開けるよ…」 「…」 無言で作業に集中する麻也の鬼気迫る横顔にちょっと気圧されながら、諒は、 「麻也さん、夕飯、何か食いたいものある? 」 「ない。」 そ、そうですか…と諒が立ち去ろうとすると、麻也はスコアから目を離さず、 「諒はもう終わったの? 」 「いや…あと1曲。俺、3曲だけだから。」 「えっ? 俺は5曲なのに何で諒が3曲なの? 」 「だって、アルバム未収録曲が3曲あるじゃん。」 「じゃあ、4曲ずつにしようよ。」 「えーっ!そんなあ…」 「その方がバランス地折れてアルバムとしていいじゃん。 未収録の中には真樹の曲も入ってるし…」 「えーん、せっかく終わると思ったのに…」 「あと、から揚げ買ってきて。」 「わかりました。あとは? 」 「エクレア食べたい! じゃあそんなわけでよろしく。」 麻也はすでに曲の世界に入っている。

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