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第8章の23

 …自分の作業もあるのに、コンビニへの買い出しも済ませた諒だったが、 麻也が自分の部屋から出てくる気配はない。 「麻也さん…9時半にはいったん休憩しようよ。」 「9時半ね、はいはい。」  約束の9時半を過ぎても、リビングに麻也はやって来ない。 「麻也さん、食わないとバテるよ…」 「今いいとこだから先食ってていいよ…」  自然と時間管理になってしまった諒も、自分の作業が細切れになってしまって迷惑なのだが、 この先もこの調子なのだろうなとちょっと諦める。 とアーティスト同士の同棲とはこんなものなのだろう。 自分から言い出した同棲生活とはいえ、甘かったな、と反省する… しかし、麻也がここまで作業に入り込む人だったとは…すり合わせの時だけでは気がつかなかった… いや、レコーディングの様子から考えれば、 曲作りは確かにあれくらいの入れ込みようで不思議はないのだろうが… 「ちょっと先が思いやられるかも…」 そう思って、でも、すぐに、そんな弱音を吐いた自分を諒は叱りつける。  仕方なく、諒が一人さびしく食事を済ませた頃、 タイミング悪く、麻也がリビングにやってきた。 「ごめん、先に食っちゃった。」 「いいよ。それよりから揚げとエクレアちょうだい。」 「ダメだよ、サラダと弁当も食って。」 サラダを食べながら麻也は、 「明日は仕事、どうなってたっけ? 」 「確かラジオと雑誌の取材のはずだよ。」 すると麻也は珍しく、 「休めるもんなら休みたい。休んで、曲をまとめてたい…」 「確かにね。でも、明日はムリっぽいと思うよ…」 「やっぱダメか…」 宣伝もおろそかにしない、がモットーの麻也が、追い詰められているということなのだろう。 まだ締切までは数日あるが、「作曲の神」が降りてきている時に曲を上げてしまいたい、 というのは2人とも同じだった。

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