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第8章の27

 その頃、麻也は、リハーサルの合間に木内に呼ばれていた。 「話というのはね、もう、次の4枚目のアルバムから、 僕を卒業したらどうかということなんだ。」 「卒業? 」 「そう。4枚目からは麻也がプロデュース。」 「諒との共同プロデュースってことですか? 」 「いや、麻也君一人がプロデューサー。 麻也君の方向で引っ張っていかないと、まだ売れないよ。 にしてもさ、バンドに力がついたってことで、ファンも喜んでくれるよ。」 「それではよろしくお願いします…」 …とは言ったものの…何だか荷が重い。 というより、諒との共同プロデュースではないことが、 またバンドのあり方の問題になるような予感がして、 麻也は少し気持ちが沈んだ。  が、スタジオに戻ると、諒が心配そうに、 「何だったの? 」 「ああ…う…ん…いや、この3枚目のアルバムで、 俺たちは木内さんの手を離れることになったんだって。」 「え、じゃあ、その後は…? 」 「4枚目からは俺がプロデューサー役。」 「えーっ、ようやくセルフプロデュース? よかったじゃん! やったあ! 早く真樹たちにも教えてあげようよ! 」 と、麻也の手を引っ張る。 真樹も直人もものすごく喜んでくれたが、 笑顔を浮かべながらも、麻也の心は落ち着かなかった。

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