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第8章の29
「海外のスタジオでレコーディングしてみたいねえ…」
なんて軽口が吹っ飛ぶような厳しいレコーディング、
麻也にとってはプロデュースのノウハウも改めて見つめ直したレコーディングの後、
ようやく3枚目のアルバム「NOT DIAMOND」はリリースされた。
その前後からまた嵐のような宣伝作業が始まり、その頃になると、
さすがの諒と麻也も抱き合って眠るか、手をつないで眠るしかなくなっていた。
睡眠時間も削るようにして、ツアーのリハーサルも初めていたからだ。
プロモーションビデオの撮影だってあった。
「なんであのアルバムタイトルなんだろう…」
麻也がベッドの中で小指のリングを見ながらぼうっとつぶやくと、諒は、
「あれ決めた時、まだ麻也さんは星の瞳、
とか俺言ってたから…ダイヤとの関係は、ねぇ…」
「俺であって、俺でない…」
「反語ですよ、反語。」
「そうかなあ…」
「明日考えましょ…」
と、諒は明かりをフットライトだけにすると、
「でも、やっぱり一緒に暮らしてて良かったよ。」
とつぶやいた。
「そうだね、別々に暮らしてたら破局になってたかもね。」
こんなことできないし、と言って、麻也は諒の唇に軽くキスをした。
「じゃ、おやすみっ! 」
と言って麻也は諒に背を向けたが、諒も心得たもので、
そんな麻也を後ろから抱き、耳元でおやすみ、と優しく囁くと、そのまま寝に入った…
もちろん二人とも生まれたままの姿で。
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