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第8章の32

「でも俺たちの作品は愛されてるんじゃないかな。 だからCDやなんかの売り上げは伸びてるんじゃない? 諒の歌詞は、相変わらず同性愛に関するものもあるし、 ライブでは退廃的なムードもあるし、支持してくれる人は支持してくれてるんだよ。」 「まあそうだけど…」 酔ってしゃべりすぎだな、と思いながらも、麻也はやめられなかった。 「諒と俺がリアルにデキてるのと、 営業ホモなのとどっちがみんなは嬉しいんだろうね? 」 「いや、兄貴…」  「でも、真樹も知ってる通り、俺は根っからのホモではないよね。 俺はただ…」 そこで麻也はなぜか言いよどんだ。 好きになった諒がたまたま男だったから…というのがこの話の着地点のはずなのに… 自分の中で、何かが違うと言っている気がした。 …俺は…諒に…何かを塗りつぶしてもらっているだけ…? …黒い過去を、なかったことにしてもらっているだけ…? 女にはできないことだから…? あんなに自分を甘やかしてくれるから…?  言葉に詰まってしまった自分に助け舟を出すように真樹が、 「だめだ、俺たち相当酔ってるわ。メールタイムにしちゃおうよ。」  そして、それぞれのベッドの上で、おのおのメールを打ち始めた。 「えーっと、愛しの恵理ちゃんへ…」 麻也はためらいを振り切るように、 「大好きな諒…」 すると真樹は笑いながら、ツッコミを入れてきた。 「ふーん、やっぱり大好きなんだ、って俺たち何で音読してんの? 」

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