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第8章の34

諒の表情は真剣そのもので、麻也は少し怖くなった。 「麻也さんと俺は、まれに見る恵まれたカップルなんだよ。 すっごく愛し合っててさ、でも、位置的にも釣り合ってるから、 誰にも引き裂けないっていうさ…」 それを聞いたから、麻也には甘えが出て不安をストレートに言ってしまったのかもしれない。 「でも、諒はカッコいいから女の子寄ってくるじゃん。 間違いだってあるかもしれないし…」 すると諒は大きなため息をつき、 「…この数か月、俺のやってきたことはいったい何だったんだろうね。 麻也さんに届いていたのは俺のカラダだけで、気持ちの方は届いていなかったんだ。」 そう言うと、諒は麻也から手を離し、冗談にせよ最悪だ、 と叫びながら玄関へと向かっていく。 出かける時間でもあったので、麻也も急いでその後を追う。  迎えのタクシーに乗ってからも、諒の機嫌は直らなかった。 「間違いなんてね、間違いたいって気持ちがなきゃ起こんないんだよ!  何で俺を信じられないの?! 」 「ほんの冗談だってば!冗談! 」 「あそこまで言って冗談?! 信じらんないよ! 」 朝から、ドライバーだっているのに珍しい大ゲンカになってしまった。 「諒、何でそこまで怒るんだよ! かえって怪しいだろっ! 」 「楽屋の外じゃあアンタにぴったりくっついてる、 そんな俺にマチガイを起こすヒマがあるのか訊きたいね! 」  そこで2人とも押し黙ってしまった。 気まずい雰囲気…

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