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第8章の35
何でこんなことになってしまったのか、麻也は、混乱する頭でどうにか考える。
お互い、ハードスケジュールでどこかイライラしていたせいはあるだろう。
日ごろ、麻也には甘々な諒さえ、麻也を怒鳴りつけさせるくらいのハードスケジュール。
あと、さっき、諒は「位置的につりあってる」と言った…
と、麻也は自分が初めて気づいた事に驚く。
もう、出会った頃の実力差のあり過ぎる2人ではないのだ…
少なくともファンや何かの目からは。
武道館を成功させたバンドのメンバー同士なのだ…
想像以上のスピードでバンドが成長しているので、諒の成長も忘れてしまうけれど…
そして、一緒に暮らして愛を育てるということは、
諒が麻也に愛を捧げ、甘やかしてくれるだけではないのだ。
なのに、自分は何てわがままだったのだろう。
まあ、対事務所なんかの最低限のことは引き受けていたけれど…
いつまでも「高嶺の花の麻也に必死で愛を捧げてくれるアマチュアミュージシャンの諒クン」ではないのだ。
このままではやがて諒に捨てられてしまうだろう。
でも、と麻也は思う。
ミリオンセラーを作らなければならないというプレッシャーはあるものの、
自分は、次のアルバムではプロデュースの一切をやる。
そのことで、少しは諒の信頼や尊敬を勝ち取ることはできないだろうか…
って、自分はやっぱり諒を下に見ていたいのだろうか…
ちらっと様子をうかがっても、諒の機嫌はまだ直っていない様子で…
麻也はいっそう悩む…
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