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第8章の37
「わかる? 」
と、もやもやしていた麻也は、おおざっぱにケンカのあらましを話してしまった。
すると意外にも真樹は、
「兄貴、カンがいいな。」
「えっ? 」
「って言っても、諒は全く相手にしてなかったけどね。」
麻也はただ驚いてしまって、真樹の次の言葉を待つしかなかった。
「でもアイドルじゃないよ。関村響子っていう、40過ぎの女優のオバサン。
サスペンスドラマとかに出てる人らしいんだけど…」
メンバー全員、忙しいこともあって、直接仕事に関係ない情報には疎い。
真樹が言うには、ある日の生放送のテレビの後、
麻也が局を出てギター雑誌のインタビュー先に向かった後、
その楽屋に、彼女はマネージャーとともに差し入れを持って来て、
諒のファンだということを大いにアピールしていったのだという。
須藤や社長たちオジサンには良く知られた存在だということだった。
「ライブを楽しみにしてる、って言ってたから、
ラストの武道館あたりにまた楽屋まで来るんじゃないの…」
「…どうしよう…」
「なかなかの美人だったけどさ、ファンていうより諒ねらいな、
やらしい感じだったから、諒は嫌がってたよ。」
そこまで言って、真樹は声をひそめ、
「ま、あれは発展するわけもないからいいんだけど、
俺たちも誰に好かれてるかわかんないと思うと改めて薄気味悪いところもあるよね。
兄貴も気をつけた方が…」
と言う真樹の肩越しに、諒が帰って行くのが見えて、麻也は動揺してしまった…
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