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第8章の39

 部屋に着くと、鍵はかかっていたが、玄関に諒の靴はあったので、 自分の部屋にこもっているようだった。  いちおうノックはしてみた。が、返事はない。  勝手に中に入るという手もあるが、それははばかられた。  だから、ドアの前で言うだけ言ってみた。 「諒、今日はごめん。俺が悪かったよ…」 反応がないことよりも、本心からとはいえないこの状況に、麻也はへこんだ。  だからといって、普通の男女のカップルのように「とにかくベッドで仲直り」をするべく、諒を引っ張り出すのも違う気がした。  シャワーを浴びる元気もなく、麻也はミネラルウォーターを少し飲むと、 リビングのソファで、毛布をかぶって寝ることにした。  リモコンで明かりを消してしまってからも、 もちろん、いろいろ気になってしまってなかなか寝付けない。  そのうち、ドアが開いて諒の気配がし、電気がついた。 「あれ、麻也さん、何でここで寝てんの? 」 仕方なく、であっても、声をかけられて、麻也は嬉しかった。 「だって、諒はベッドで休ませたいと思って…」 「なあんだ、そんなこと…」 少し機嫌が直ったようだ。 麻也はすかさず起き上がり、 「諒、今朝はごめんね。俺が悪かったよ。 結局俺が、その、自分に自信が持てないからあんなこと…」 すると諒は、ほっとしたような顔をして近づいてきて、 ソファに座って、麻也をギュッと抱き締めてきた。 「嫌だ。そんなこと言わないで。 俺の前でどうして麻也さんが麻也さんを信じられなくなるの? それって、俺の愛がまだ足りてないってことじゃん…」 「諒、そんなことないよ…」 「ごめんね、麻也さん。俺は誓いを忘れてたかもしれない。 麻也さんを癒すって。守るって。 戦場みたいな毎日で、満身創痍って感じだけど、俺は最後まで、体張って麻也さんを守る。 麻也さんには、好きな戦場に連れてきてもらったんだから…」 「諒…」  

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