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第8章の42

 3人が居酒屋の個室に着いた時は、恭一と真樹は結構盛り上がっていた。 「もう少し遅かったら、恭一さんの店に行ってたかも…いいベースが入ったんだって。」 「真樹、またベース買うの? 恭一ったら商売上手すぎるよ…」 その一方で、初対面の諒と直人はかしこまり、恭一に挨拶をしていた。」 「あれ、恭一、タバコ吸わないの? 」 茶色いロン毛に黒のTシャツの、ちょっとメタルっぽいいでたちの恭一は、 「みんな吸わない人だって聞いたからさ。それに、ボーカリストもいるし…」 「すみません~…」 みんなが揃ったということで、ようやく乾杯… 「いやあ、でも光栄だなあ。ディスグラのみんなが集まってくれるなんて。」 「いやいや、恭一さんは兄貴の恩人だから。」 「そんなことないよ。麻也には本当に世話になったし。 俺はせいぜいグチ仲間だっただけで。」 そこで麻也は、ヒヤヒヤしながら口をはさんだ。 「いやいや、恭一がいなかったら、俺、今ここにいないよ。 でも、あのころは本当にグチばっかり言い合ってたよね。」 「うん。事務所の方針は何だ! とか…」 「給料が安すぎるとか…」 「他のメンバーとは仲が悪かったし。 麻也がそんなガタガタのバンドを、リーダーとして必死でひっぱってて。 俺は力量のないボーカルとドラムを締め上げる役でさ…」 「締め上げる~? こんな優しい恭一さんが?! 」 昔を知らない3人はびっくりしていたが、 「だって、すぐ諦める奴らで…さすがに解散直前の3枚めのアルバムの頃は頑張ってたけど… まあ、今は、麻也はそんな理不尽な負担がないみたいで良かったよ。」 「そうかなあ…? 」 麻也が満足げに言うと、恭一は、そういえば、と身を乗り出し、 「諒君と麻也って、本当につきあってるの? 」

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