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第8章の43
麻也はドキッとする。恭一は地雷を踏む気なのだろうか…?
すると諒が、
「本当ですよ。今日も一緒に出勤してきたし。帰ってからも一緒です。」
「じゃあ、ドキュメント通り、一緒に暮らしてもいるんだ。」
「そうそう、あの番組はやらせゼロでしたからね。」
と言ってから、何を思ったか、幸せにやってます、と付け加え、
勝手に諒は顏を真っ赤にして、みんなにからかわれてしまった。
「いいね。麻也も順風満帆じゃん。」
「う…ん、でも、これからのツアー、本数多くてキツいかも、なんだ。」
「でも、47都道府県全部回れるなんて幸せだよ。」
もちろん、ビッグになればなるほど苦労も大きくなるんだろうけどね、
とフォローしてくれるのが、恭一の優しいところだ。
それからは、恭一は麻也のやんちゃ時代の武勇伝などは語らず、何となく聞き手にまわり、
4人は自分たちのことばかりしゃべってしまった。
が、恭一はずっと笑顔だった。
武道館、楽しみにしてるよ、と言ってくれた恭一と、
別れ際、諒と直人が連絡先を交換しているのが目に入って、ちょっと不安になる。
まあみんな忙しいだろうから、そんなに連絡を取り合うこともないだろうとは思うが…
諒が恭一に、自分の過去など尋ねたら…と思うと…
その不安は急激に、酔った麻也の頭の中に広がっていった。
家に入るころには、麻也はすっかり無口になっていた。
諒にも異変は伝わってしまい、
「麻也さん、どうしたの? 」
麻也は仕方なく、
「うん…ちょっと飲み過ぎたのかな…」
「そんなに飲んでたっけ? ま、明日も早いから先に寝てて。」
と、諒は麻也にベッドの上でミネラルウォーターを飲ませ、
服を脱がせて横にすると、毛布をかけてくれた。
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