324 / 1053

第9章の2

 手早く着替えを済ませ、メークを落として別室の方へ顔を出すと、 初めての公演地なのに、関係者や来客でいっぱいだった… まあ、中にはあまり関係のないような、 そしてディスグラのこともあんまり知らないような、 キレイなモデル風の女の子たちもいて、 メンバーに誘うような視線を送ったりはしていたが… 「すごくよかったよ。あんなに迫力あるなんてびっくりしちゃった。」 地元の放送関係者に一言もらったところで、 打ち上げ会場に移動することになってしまった。  乗せられたマイクロバスが動き始めると、 また追っかけらしいタクシーが何台も追いかけてくる。 店の前で降ろされると、すでに追っかけの女の子たちが待ち構えていた。 ―え…すっぴんでもかっこいい… ―魔夜ちゃんなら落とせるかもよ…オンナも好きだもん… とんでもない囁きが耳に入ってきて、麻也は焦って諒を探してしまう。 と、諒が先に店に入っていくのが見えた。 諒と手がつなげればよかったのに…  店は地元の名物料理の店で、大広間に通されてしまった。  イベンターの社長がメンバーを見て、いや本当に背が高いんだなあ、 と、驚きの声を上げる。 プロポーションが良くて男前だ…と言われつつ、 席に案内されると、なぜかメンバーそれぞれにさっきのモデルたちが一人づつつき、 コンパニオンかなにかのように、ビールをついでくれる。 ツアー中禁酒の諒はオレンジジュースをもらっていたが…  乾杯が終わると、麻也付きの女の子がささやいてきた。 「福岡では、お姉ちゃんがお世話になりまして…」 「えっ? 」 「あ…の…麻也さんが前のバンドの時、夜…」 麻也は真っ青になった。 「ええーっ!? 」 「今でもお姉ちゃんたら、MA-YAさんとの夜が忘れられないって…」 「いや、今そんなことを言われても…」 「じゃあ、今夜、私でいいですか? 」 「だめだよ。俺、昔とは違うんだから。 今は諒とつきあってるんだよ。 同棲だってしてるんだよ! 」 「うそ、そんなの絶対にうそ。営業用の顏じゃないですかあ。 それにほら、諒さんもあの子を絶対お持ち帰りしますってば。」 「そんなはずないよっ! 」 「えー、でも麻也さん、私もうみんなにお姉ちゃんのこと自慢しちゃったし…」 麻也はひっくり返りそうになった。

ともだちにシェアしよう!