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第9章の2
手早く着替えを済ませ、メークを落として別室の方へ顔を出すと、
初めての公演地なのに、関係者や来客でいっぱいだった…
まあ、中にはあまり関係のないような、
そしてディスグラのこともあんまり知らないような、
キレイなモデル風の女の子たちもいて、
メンバーに誘うような視線を送ったりはしていたが…
「すごくよかったよ。あんなに迫力あるなんてびっくりしちゃった。」
地元の放送関係者に一言もらったところで、
打ち上げ会場に移動することになってしまった。
乗せられたマイクロバスが動き始めると、
また追っかけらしいタクシーが何台も追いかけてくる。
店の前で降ろされると、すでに追っかけの女の子たちが待ち構えていた。
―え…すっぴんでもかっこいい…
―魔夜ちゃんなら落とせるかもよ…オンナも好きだもん…
とんでもない囁きが耳に入ってきて、麻也は焦って諒を探してしまう。
と、諒が先に店に入っていくのが見えた。
諒と手がつなげればよかったのに…
店は地元の名物料理の店で、大広間に通されてしまった。
イベンターの社長がメンバーを見て、いや本当に背が高いんだなあ、
と、驚きの声を上げる。
プロポーションが良くて男前だ…と言われつつ、
席に案内されると、なぜかメンバーそれぞれにさっきのモデルたちが一人づつつき、
コンパニオンかなにかのように、ビールをついでくれる。
ツアー中禁酒の諒はオレンジジュースをもらっていたが…
乾杯が終わると、麻也付きの女の子がささやいてきた。
「福岡では、お姉ちゃんがお世話になりまして…」
「えっ? 」
「あ…の…麻也さんが前のバンドの時、夜…」
麻也は真っ青になった。
「ええーっ!? 」
「今でもお姉ちゃんたら、MA-YAさんとの夜が忘れられないって…」
「いや、今そんなことを言われても…」
「じゃあ、今夜、私でいいですか? 」
「だめだよ。俺、昔とは違うんだから。
今は諒とつきあってるんだよ。
同棲だってしてるんだよ! 」
「うそ、そんなの絶対にうそ。営業用の顏じゃないですかあ。
それにほら、諒さんもあの子を絶対お持ち帰りしますってば。」
「そんなはずないよっ! 」
「えー、でも麻也さん、私もうみんなにお姉ちゃんのこと自慢しちゃったし…」
麻也はひっくり返りそうになった。
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