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第9章の3

 麻也はあわてて立ち上がって諒の席まで行き、諒と女の子の間に割って入ろうとしたが、 諒は麻也に冷ややかな視線を向けると立ち上がり、 須藤と地元関係者のところに行ってにこやかに話し始めた。 いやな予感。 気がつけば麻也は、真樹に腕を引っ張られ、廊下に出ていた。 「兄貴、福岡のゆかりちゃんの件、ヤバいよ。」 そうは言われても本当に困ってしまう。 「そんなの昔の話で、何よりそんなコ覚えてないよっ。」 「でも諒には伝わっちゃたみたい。口の軽い連中だよ。」 「俺なんか、ストレートに誘われちゃって。」 「姉妹食べ比べ?」 腹が立ったので言ってやった。 「お前が諒に食われるようなもんだよ。」 「うわっ、そう言われると気持ち悪っ! 」 「だろっ? 何より! 俺にはそんな変な気持ちないのに、 諒はもう怒ってるみたいなんだよっ! 」 「いや、それを俺に言われても…」 仕方なく麻也は真樹と座敷に戻った。 諒はなごやかに談笑していたが、ちょっと様子が変なのは、麻也にはわかる。 そのうち、諒は真樹を廊下に呼び出し、戻ってきた真樹は麻也にすり寄ってきた。 「兄貴、今日は俺とおねんねだから。」 「えっ? ウチはダブルだよ。」 「諒に部屋チェンジさせられたんだよっ! 」 「えっ? なんで? 」 「知らなーい。麻也さんてば不潔ーっ、とか…」 しなを作って冗談めかしてくれる真樹に向かって怒ってしまった。 「何それ…自分の過去は棚に上げて…」 「いや、兄貴のパターンと諒のは違うと思うよ。」 「どういうこと?! 」 「い、いやあ、諒の場合、グルーピーじゃないし、優しく思い出に…」 と、真樹はさっさと諒の方に寄って行った…

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