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第9章の5

すると、しばらくしてどこかの部屋のドアが乱暴に開くのが聞こえ、 「うるせえんだよっ! 」 という声が聞こえた。そしてドアは乱暴に閉まった。 「今の諒じゃない? 兄貴、行ってみれば? 」 「確証がないから、いい。 それに諒だって、俺の過去のことはいい、って言ってたんだから。」 「ま、妬かれるだけ幸せってことかな。 でも諒にしてみれば、やっぱりショックだったと思うよ。 それだけはわかってやれよ、兄貴。」  次の日も、諒は全く麻也を無視していた。  新幹線の席も、直人とチェンジされてしまったくらいだった。  ただ、到着後、リハーサルまでに時間があったので、先にみんなでホテル入りはした。  カードキーを受け取ると、どうやらまた諒とは同じ部屋らしい。 無言のままエレベーターに乗り、諒が部屋のドアを開けるのにくっついて中に入った。 今日もツインではなく、ダブルである。 「いい部屋だね、諒。」 思わず口をついて出た言葉にも、諒は無言だった。 「諒…」 おそるおそる諒の横顔を見ると、諒はたいそう疲れ、傷ついているように見えた。 そして、 「…俺、舞い上がり過ぎていて、目が曇っていたのかな…」 「何? それ、どういうこと…? 」

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