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第9章の7

今度は諒の表情が予想以上に曇ってしまい、麻也も困ってしまったが、仕方なく続ける。 「…地方でのライブとか、キャンペーンまで追ってくるヤツもいたし、 地方のエラいオッサンとかね。 電話番号書いた紙、無理やり握らされたりね…気持ち悪かった…」 「麻也さん、その先はもういいよ…」 「良くないよ。そう言ってもまた諒、後から何か言うじゃん。 俺たちはカラダだけの関係なの? とか…」 「もうそんなこと言わないから。」 「いいから最後まで聞いて。 それで、そのオッサンたちを体よく断るために、面倒くさい時でも女の子をひっかけるんだ。 ファンの口コミが怖いから、襲撃してこないからね…」 「…」 「俺なんかは、女の子に何もしないで寝ちゃうなんてこと、よくあったよ。 あと、ほんとに何も起こらないように、女の子二人同時にひっかけて部屋に入ったり… バカみたいな日々だった。悔しいよ。でも、仕方なかったんだ…」 「麻也さん…」 「諒もアマチュアの時、聞いただろ? 俺が、ホモのMA-YAって呼ばれたの。」 「あ…」 「きっと、何もされなかった女の子が言いふらしたんだと思うよ…」 諒の様子が変わったのはわかったが、 「社長のお手付き」の件を思い出させたくなかった麻也は、あわてて、 「須藤さんに頼んで、俺、別の部屋に移るよ。諒もその方がいいよね。」 と、床に降ろしたバッグを持ち上げようとした…ところを、諒に腕を掴まれた。 「麻也さん、それだけはやめて。」 「諒…」

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