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第9章の14
次の日も移動で、ライブだった。
この公演が終われば、東京に戻って一日だけオフがもらえることになっていた。
「諒、あさってのオフはどうするの? 」
移動中のバスの中で、麻也は何となく尋ねてみた。
「うん…ああ…何も考えてなかった。麻也さんは? 」
「昼寝。何だかまだ体が慣れてないから…」
「ああ、じゃあ俺もそうしようかなあ…」
と言ってくれるのは嬉しいが、麻也の胸にはちょっと引っかかるものが…
「あのさあ、余計なことかもしれないけど、実家に顔出さなくていいの? 」
お正月以来じゃん。」
それを聞いた諒は、
「いや、ごめん、俺、今、仕事モードだから…」
「あ、ごめんね…」
すると、視線は窓の外に向けたまま、諒の左手は麻也の右手に伸びてきて、
優しく優しく手を撫で始めた。
その2つの手の小指には、お揃いの、ペリドットとダイヤの入ったシルバーリングがはめられている。
二人の関係は本物だけれど、営業用の関係でもあることが、
今日は何だか引っかかってしまう…
ホテルの部屋に荷物を置きに行ってもそうだった。
今日の部屋は壁の色が濃くて、ちょっと古い感じでイマイチ。
でも、荷物を置いたらくつろぐ間もなく会場入りなので、
すぐに出なくてはいけないのだが…
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