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第9章の17

 この日は2人とも打ち上げに参加した。 「諒、いいの? 俺、参加して…? 」 「うん…その代わり、店の外では絶対に手つなぎね! 」 と言って、さらには楽屋の中にもかかわらず、 もう、麻也さんを監禁して誰にもお酌させたくないよぉ… などと抱き締めて頬ずりしてくるので、麻也まで周囲の失笑をかってしまう。 「ちょっと、諒、離して! みんな行っちゃうよっ! 遅れる~っ! 」  打ち上げはこちらの接待の面もあるのだから、フロントの2人がいないのは大事件です、 と、朝、仮病を見破った須藤に釘を刺されていたこともあり、 移動のタクシーの中で、2人は何となく殊勝な顏になっていた。  そして、まだ諒は慣れないそうだが、店の前で車から降りると、 関係者の他にファンというか追っかけがいて騒ぎ出す。 ―あ、ほんとに手つないでる… ―やっぱ、あの2人、デキてんじゃん… 周囲のさざめきをよそに、麻也の方がとまどい気味な諒をリードして店に入ろうとすると、 ―麻也ちゃん、かかあ天下! と、声がかかった。これには二人で笑ってしまい、声がした方を見てしまったが、 そうするとまたワーキャー騒がれた。    宴会が始まると、諒は酒を注がれることのないよう、 オレンジジュースのグラスを手にする。 このツアーから諒は本当に酒を飲まなくなった。 「酒を飲むこと自体より、酔ってしまって大声になることが喉に悪い」と聞いたのが気になったらしく、 ツアー中の禁酒を始めたのだが…ちょっと、ツアー成功への願掛けに思えないこともない。 それについては感謝しているのだが…  申し訳ないことに、麻也はライブの後のアルコールをやめることができない。 ベッドはダブルなのに… ライブの爆音や熱気の興奮の余韻がどうしても体内に残ってしまうので、 そのほてりを冷まさずにはいられないからだ。 その後の、諒との熱い情事は極上のシャンパンのシャーベットのように、 完璧に麻也をとろかすばかりか、ほてりを消し去ってくれるのだが… 両方を知ってしまった今となっては、本当に、どちらかでも欠けるのはいや…  この夜も麻也は、諒が一緒であることも嬉しくて、 昨夜の分までたっぷりと飲んでしまった。

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