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第9章の22

 次の日は何社もの取材を地元で受け、 2人が東京の自宅に帰りついたのは夜の8時ごろだった。  麻也は密かに知っていた。自分が地元紙の記者と立ち話をしている間に、 諒が地元のキャラクターのマスコット人形を買っていたことを。  だから夕食後のコーヒーを飲みながら、さりげなく尋ねた。 「…で、諒、明日は何時くらいに出かけるの? 」 「えっ? 」 「…さっきお土産買ってたじゃん。明日は大翔くんのとこ行くんでしょ? 」 「あ、いやあ…」 諒は本当に迷っているようだった。 「でも、明日は麻也さんとゆっくりしていたいかな、なんて…」 「あ、でも、俺に気はつかわなくていいよ。俺の方はツアーでずっと一緒だからさ。」 「…」 「行って、いっぱい一緒に写真を撮っておいでよ。 今はわからなくても、大きくなった時に、『俺はオヤジにこんなに愛されてたのか』って、 喜んでもらえると思うよ。」 「そうかなあ…」 と言いながらも、この、まだ若くて美しすぎるオヤジは嬉しさを隠しているようだった。 隠している、というのはやっぱり… 麻也の中で密かにもやもやしていることを諒もわかっているからだろう…

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