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第9章の32
ちょっと今日の諒は一人で抱え込み過ぎている、と麻也は思う。
温度差、と思われてしまうと壁が出来てしまうが、
まだまだ自分たちはひよっこだということも諒には思い出してほしいと思う。
よく、立場が人を作るというが、運良く売れっ子になった今の位置をせめて利用して伸びていくしかないのだ。
シャワーを浴び、2人でジンジャエールを飲んでからも、
無言が続き、麻也の方から声をかけた。
「諒、もうそろそろ寝ようよ。明日も早いし。」
すると諒はやっぱり、
「麻也さん、麻也さんは今日のライブどう思うの? 」
「まずかったとは思うよ。でも、こういうこともあるし。」
と、さっきまで考えていたことを、そのまま伝えた。
「…なるほどね、売れてるうちに、実力を蓄える、ってわけね…」
「うん。悔しいけど、まだ俺たちバンドとしても若造だからさ。
あんまり悩みすぎないで、また明日からを丁寧に、いこう。」
「そうだね。麻也さん、ありがと。」
諒の表情が少し戻ってきたところで、麻也は白のバスローブを脱いで、
いつものように、素肌でベッドに入った。
ベッド周りの明かりだけ残して部屋を暗くすると、
諒ものろのろと、裸でベッドに入ってきた。
2人でフットライトだけを残してスタンドの明かりを消し、横になったところで、
麻也は諒の右手を取って、そっと自分の中心に導いた。
えっ? と諒が驚いていると、麻也は、
「お客様、<本日の一杯>はよろしかったですか? 」
と、冗談ぽく言ってみた。
それを聞いた諒は大笑いし、何それ? そりゃーいただきますよ、
と麻也の上に覆いかぶさってきた。
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