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第9章の34
サービスエリアで食事をしながら、メンバーはぽそっと、
「ステージそのものはいつでもどこでも新鮮なのにね…。」
「バス移動とかがねえ…」
「そうだねえ、俺もここまで長いツアーは経験ないもんね…」
と麻也も言い、
「これは、景色とか、地元の名産とかに期待するしかないかも…」
それを耳にした須藤も、
「そうですよ。こんな九州の、温泉地でもない山の中なんて通ることないでしょう?
空気だって、その土地土地ではっきり違うし。」
「確かに。公演地も先に待っているしね…」
「まあ、どんな職業でも、毎日同じような日々が続くことの方が多いわけですからね。
ライブとか、強い刺激があるミュージシャンはまだ恵まれている方かもしれませんよ。」
「なるほどねえ。」
ついこの間全員で大学を中退したばかりで、
普通の社会人の経験のないメンバーはしみじみとその話を聞いた。
しかし、須藤は釘をさすのも忘れてはいなかった。
「ただ、一度でもツアーに失敗すれば、
もうこんなに長いツアーはなくなりますから気をつけて。
そういう意味では、忙しいでしょうが、
次のアルバムやツアーのことも意識しておいた方がいいかも…」
耳が痛くなる話だった。
そしてその数時間後、社長からの電話で同じことを言われ、
特に麻也と諒は、曲作りを頭の隅に置いて、ツアーを過ごすことになった。
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