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第9章の35
実は、ラストの武道館の前、四つほどの会場では、まだチケットは完売していない。
それをどうにかしたいのと、まだまだの若手バンドとしては、忘れられないように、
いつもの全国ネットの音楽番組にも出演することになっていた。
何と言っても時は第二次バンドブーム。音楽性が似ている売れっ子はいないが、
ひしめきあっている新人たちにいつ取って代わられるかわからないのだ。
しかし、その頃になると、今度はメンバーの疲労がピークになっていた。
麻也も、肝心の諒の声が出なくなるのを恐れて、
ベッドの上でもキスをかわすとさっさと手をつないで寝るようにしていた。
なじみの人ばかりの二次会では、「東京との打ち合わせがあるので」と、
諒を一足先に帰すこともしていた。
その一方で、例のテレビでは、自分たちを印象付けるために、
諒と絡んで、一本のマイクで歌う演出ができないか、交渉していた。
結局「絶対にキスはしない」という約束で、それは認められた。
短めの金髪も華麗でグラマラスな諒の表情と、
ふわっとカールした黒髪も可憐でノーブルな麻也の表情の対比は、
「本場のグラムロックより綺麗」とスタジオでの反応は予想以上だったし、
視聴者の声やファンレターの反応も上々だった…
でも、やっぱり完売できない地区は残ってしまったのだが…
そしてようやく迎えた二度目の武道館…
チケットは完売していたが、取材も多いので、ますますもって失敗は許されない。
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