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第9章の37

 メークを落とし、衣装からスーツに着替えて、楽屋の別室に行くと、 前回以上に関係者たちでごった返しており、 あっという間にメンバーはそれぞれが取り囲まれた。 それが日頃から世話になっている関係者やマスコミならいいのだが… (俺たちのレベルでもうこれなの…?)  テレビでしか見たことのないちょっとした有名人たちが、 マネージャーやコネの持ち主たちと一緒に自分を取り囲んでいた。  もちろん笑顔で応対するし、人との出会いはありがたい。  が、やっぱり見えてしまうのが、 有名人なら誰でもいいっぽい何人かの女の子たちの火花の散らし合いだが… MA-YAの頃の自分ならいざしらず、今の麻也は胸の中で冷笑してしまう… (あなたたちみたいな人、俺は嫌いですから… 俺と寝るにふさわしいのは諒だけですから…)  ちらっと見てみると、男性客の多いリズム隊も女の子は少ないが似たようなもので、 それを見て、挨拶もできないまま恵理が帰って行ったのが麻也の視界に入り、 胸が痛くなった。 (後で教えてあげないと…)  そして、諒の方はと見れば、囲んでいる数がケタ外れに違う。 火花もかなりのもので、麻也もちょっと焦る。 (あれはほんとのファン同士っぽいよな… あの、清楚っちゅーか可憐な美人…諒、頼むから見ないで…) なんだかんだ言っても、束縛はお互い様と思っている麻也も悩む。 (いやあ、諒、今夜俺と一緒に帰ってくれるかなあ…女の子と飲みくらいは許すべき?) 気がつけば、例の美人を諒から隠すように須藤が立っていたが、 諒の女房気取りで横に立っている例のオバサン女優は排除できなかったらしい。 その他には、テレビで共演したこともある、30がらみの女性歌手もいた。  そこに声をかけてきたのは、店の同僚を連れた恭一だった。 通り過ぎながら、 「すごく良かったよ…」 「恭一、ごめん、また電話する…」 お友達なの? と一斉に訊かれるが、恭一が男性なので、騒ぎにはならない。

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