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第9章の52
ちょっとうらやましいかも…
でも、せっかくボーカリスト同士なのだから、
それにいつもべったりというのも何だか…という気がして、
「連れて行って」とは麻也は言えなかった。
自分もそういうつながりをまた作らなくてはとは思ったけれど…
「いいなあ、俺、このところそんなナンパされたことない…」
と言って、気づいた。
「もしかして、諒が俺の後ろで誰でも彼でもにらみつけてるんじゃないのぉ…? 」
「あは、それもちょっとはあるかも。」
「何だよ、もー…俺のせっかくの出会いを…」
まあ、誘惑がそれだけ心配なのだということにしておこう。
「じゃあわかった。諒が実家に行ってる間、
俺は楽器屋とCD屋をふらついていると思う。
で、夜だけ実家に行って、一泊して帰ってくるよ。」
諒の表情がぱっと輝く。さっそく麻也が母に電話すると、母は大喜びだった。
「あー、麻也さんが預けられてよかったあ…」
「…託児所かよ…」
ようやくデザートのチーズケーキに取りかかりながら、
「じゃあ、明日のショッピングデートは、麻也さん、OKなのね? 」
「うん。CD屋と恭一の店が見たいなあ。
諒とデートなんて久しぶりだもんね。嬉しいな…」
「ね~♪ 俺は服と靴が…麻也さんのも見つくろってあげるよ。
あと、本屋さん行こうよ。」
「うんうん。わあ、忙しくてゴハン食べる時間ないかも。」
「いーえ、それは食べるんです! 」
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