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第9章の54
こんなに人のいるところで…
麻也は体が熱くなるのを感じたが、
「…それはガマンできるから大丈夫…」
「…へえ…<ガマン>なんだぁ…」
「…諒に言われたくありません…ゆうべ寝ちゃったくせに…」
「…根にもってるんだぁ…」
「もう、うるさいよっ! 」
…その後はめまぐるしかった…
とにかく、諒の服選びで時間がかかり、靴選びにも時間がかかり…
麻也のジーンズは気に入るものがなく(後日、三田に見つくろってもらうことにした)、
結局諒に選んでもらえたのは普段着のラフなシャツ一点になり…
諒が注文をつけるので、インナー選びも麻也の分は時間がかかり…
…CD屋も本屋も時間がかかり…
10時閉店の恭一の店に間に合わず…
初めて入るおしゃれな感じの居酒屋でようやく夕食…
でも諒は、マグロのお寿司をぱくつきながら、
「実家から戻ったら、俺、また店巡りしようかなあ。
麻也さんにはあと半日あるからいいけどさあ…」
「うーん、俺も半日じゃ足りない気がするから付き合うよ。」
すると諒は以外にも、
「いえ、いいです。」
思いもよらない言葉に麻也は動揺してしまい、
「え? どうして? 」
「だって、一人の方が効率いいじゃん。」
それはそうだけど…麻也は寂しくなって、うつむいてしまった。
と、
「うっそぴょん♪ 寂しがる麻也さん見たかったの♪ 」
「もー、その日はメシおごってよねっ! 」
怒った顔も可愛い、と諒は大笑いしていたが…
麻也はちょっと後悔していた。
(諒に余計な出費させたくないな…さりげなく後から忘れたことにしよう…)
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