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第9章の55
…しかし…
その夜は結局ほろ酔いで、シャワーも浴びずに2人はベッドに倒れ込んでしまった…
次の日は、シャワーを浴びると、午前中から諒は服選びに余念がなかった。
これがシャツ一枚でも済む夏でよかったのでは…と麻也は密かに思ったが…
「ねえ、初デートみたいだね。」
「ふふふ…麻也さん、妬いてるの? 」
「そうじゃないけど、俺との時は…」
「だって、すぐ脱がすんだもん。」
麻也は心外だったのですぐ反論した。
「脱がせたの諒じゃん…」
すると諒は、服から目を離さず、残念そうに、
「俺はあの時はあの時で一番のお気に入りを着てたんだよ。」
そう言われて、今度は麻也の方が困った。
「…覚えてない…だってすごかったんだもん…」
すると、諒は笑い出し、麻也の顏を見ると、
「えーっ、そんなに諒クンのテク、すごかった? 」
「展開がだよっ! 」
…結局、麻也のすすめた黒のプリーツ加工の長袖のシャツに、
お気に入りの赤のパンツということになった。
「じゃあ、遅くなったらごめんね。先に寝てて。」
「うん。時間は気にしないで。とにかく先輩に粗相のないようにね。」
…お財布持った? はやめた。
一人っ子でかぎっ子だった諒は自分よりずっときちんとしてるのだ。
それに、またお金のことを考えるのも何だか嫌だったし。
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