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第9章の59

 それでとりあえず諒の生活費の負担を減らすことには成功したが…  …でも、慰謝料って… 「まだ、麻也さん、何か? 」 「ううん…」 納得できないので、ちょっと言ってみた。 「俺も慰謝料とか払わなくていいのかな…」 「えっ? なんで? 払う必要ないじゃん。」 「そう? じゃあなんで諒は払ってるの? 形式だけの結婚はおあいこだったわけでしょ? 」 「うん。でもそういうことだけじゃないんだよね。向こうは女性だから、 友達にしか過ぎなくなった男の子供を1年近く腹に入れてなきゃいけなくなっちゃったわけでしょ? それって、ほんとに地獄だったと思うもん。俺にはできない。 麻也さんもどう思う? 俺がいるのに、恭一さんの子供が腹にいるって。」 「うーん、確かに…」 でも、よく考えれば、諒がその女性と関係を持っていたことが そもそも自分を苦しめているわけで… 「…もうその事実はどうすることもできないから、せめて…なんだ。 麻也さん、こんなヤツで本当にごめん。」 苦しいけれど、諒を失いたくない一心で、麻也もおだやかに詫びた。 「ううん。俺の方こそ、ついカッとなっちゃってごめんね…」

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