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第9章の62

「ふーん、そうなの。それで送りオオカミやってたの。諒はギタリストは得意だもんね。」 「な、何を、麻也さん…」 諒が送りオオカミなんてやっているはずもなく、それは表情にも見て取れるのだが、 麻也は何だか嫉妬に火がついてしまった。 「いくら大泣きったって、この時間まで、 男一人タクシーに押し込められないわけないでしょ? 」 「いや、ホントだって。1人にして何かあったら大変だって、 大人しかいないウチにお連れするか、一人暮らしの山田さんが連れ帰るかってなって、 そこへ、立原さんの奥さんから電話が来て、迎えにきてもらったんだもん。」 「えっ? 立原さんて奥さんいるの? 」 「うん。お腹大きいロリっぽい人。」 「えーっ、何それ? 変! 犯罪じゃん…」 「それがね、中身はすごくしっかりした感じの人で、 見た目は似合いの可愛いご夫婦で、問題ないの。」 「何? 所帯持ちが可愛い? 」 するとそれを聞いた諒は笑い、 「なんだ、そういうこと? ごめんね。立原さんが可愛いってのは一般論であって、 世界で一番可愛いのは麻也さんだよぉ…それに、麻也さんだって所帯持ちじゃん。」 まあ、諒クン王子といるから生活感ないけど… と、勝手なことを言いながら諒は立ち上がると、 麻也を抱き締め優しいキスをくれた。  でも、麻也は言わずにはいられなかった。

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