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第9章の64

「そうだね。仮眠なんてしたら、俺、爆睡になっちゃう。」 「じゃ、着替えだけ持って出発しますか。」  二人の実家は、東京のはずれの町田市。  市内でも2人の家は、徒歩でも行き来しようと思えばできる距離だ。  が… 「諒、俺、後から一人で出るよ。」 「えっ? 麻也さんどうしたの? 」 寂しい気持ちがやっぱりあって、麻也は諒の気を引こうと本音を言ってみた。 「何か、諒がお父さんモードになるのに邪魔かな、って思って…」 「そんなことないよ。『とーちゃんがこのおじちゃんとチューしてるから、 お前はメシが食えるんだ!』…って…」 「…言えないでしょ? 」 「ハイ。そこまでは…」 「何より、おじちゃん、はやめて! お兄さん! 」 「はい。もー、そんなことばかり言ってないで、早く一緒に帰ろうよ。寂しいし! 」  それで、まだ朝早くに、2人はタクシーに乗り込んだ。 行き先を告げるなり、手をつないだまま、2人とも爆睡してしまった…  

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