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第9章の65

 先に着いたのは麻也の方で…少し寂しくて、走り去る車の中の、 諒の金色の後頭部をずっと見ていた…  その後は、大歓迎の母に朝食を食べさせてもらい、昼寝をして… 夜は父と晩酌をし… あっという間に次の日の昼ご飯まで食べて… 郊外ののどかな風景に未練を残しつつ、都心の2人のマンションに帰ってきた。  諒とは、時間の約束はしていなかった。あんな風に計画は立てていたけれど、 もう一泊くらいしてくるのではないかと思ったからだ。  それに、もうあさっては半分仕事モードなのだから、諒には充分休ませてあげたいという気持ちもあった。  それで、はたと気づいて、メールした。 ―ウチに到着しました。もしかして諒は連泊かな? 決まったら連絡下さい。  しかし、なかなか返事は来ない。 「外食にでも行っちゃったかな…ほほえましいよね…」 などと、勝手に想像して、麻也は珍しく喜んでいたが… さすがに自分も今日から企画書とかを考えるのも何だし…と、恭一の店に行くことにした。  恭一と世間話をしていると、ギター担当の前田にうまく誘導され、 いつしかギターコーナーであれこれいいギターを試奏していた… 手書きではあったけれど、カスタムの提案書まで出てきて… 「いやあ、どうしようかなあ…」 恭一もやってきて、 「仕事の合間にでも考えておいてよ…」 などと言う。  

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