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第9章の66

 諒からの返事はまだ来ない。  いい時間になってきたので、麻也は休憩に入る恭一と夕食を取ることにした。 店の近くの創作料理の店で、恭一は個室を指定してくれた。  席に着くと麻也は、 「武道館の時はごめんね。全然話ができなくて…お詫びに今日はごちそうするよ。」 「いいよ、そんなの…」 恭一の笑顔がまぶしい。  そして、勤務中の恭一のためにアルコール抜きで食事を始めると、 やっぱり、遠慮なく感想を言ってくれた。 「麻也もそうだけどさあ、メンバーみんな、随分と成長したよねえ。 でも、ライブの構成がちょっとわかりづらいかな。」 「やっぱり? ウチ、『わかりづらい』がキーワードで定着しそうなんだよねえ。」 「そうだねえ、諒君の曲と麻也の曲が、同じアルバムとは思えないほどかけ離れてることが、 必ずどのアルバムにもあるんだよ。」 「うーん、3枚目はそれをどうにかしたつもりだったのに…ダメだったか…」 「でも、それでもこれだけ売れてるんだから、新しい形といえば形なんだろうけど… に、しても、ビジュアルもホントにカッコいいよね。 背が高くて、顏が良くて、演奏も上手いし…若いファンにはセクシーって言われてるだろ。」 「…まあね…でも、女に日和ってるとか、男同士のチューはなんだとか言われる…」 いつもは気にしていないはずのこんな言葉も、恭一になら言える。 「それは、女の子の方が情報早いから仕方がない面もあるんじゃない?  メンバーもカッコいいしさ。チューはまあ、個性ってことで…」 2人で大笑いしたが…  相変わらず諒からの返事は来ない。

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