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第9章の67
恭一と別れて、家に着くと、麻也は思い切って諒の携帯に電話してみることにした。
(お父さんモードの時に悪いなあ…)
すると意外にもすぐつながった。
「もしもし、諒、俺だけど…」
―麻也さん、ごめん、熱出しちゃって動けなくなっちゃって…
今まで聞いたことのない、弱々しい声だった。
麻也はすぐにでも飛んでいきたくなったが…
「何度あるの? 」
―8度5分まで下がった…明日は何としてでも帰るから…
「だめだよ。寝てなよ。お母さんとかいるんでしょ? 」
―うん。大翔は隔離だけど、オフクロはいてくれる。
「良かった…じゃあ、あさって事務所で会おうね。
それじゃあ…」
―ま、麻也さん…
「なあに? 」
―お薬がわりに、チューして…
「はあ? 」
(お母さん、そばにいないのかなあ? )
まあ、病人なので大目に見てやろう。
「諒、早く良くなってね。愛してるよ。ちゅっ。」
―あーこれで治るわ~、麻也さん、愛してる、ぶちゅーっ…
「なんかうつりそう…じゃあ切るからね。おとなしく寝てね。おやすみ…」
きっと実家で安心して疲れが出たのだろう。
そして、珍しくその後もメールはなかったから、
相当弱っているのだろうな、と麻也は思った。
とにかく予想外の展開だった。
(俺も気をつけなくちゃだな。)
と、CDを聴くのも早く切り上げて、麻也は久々に早寝をした。
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