1001 / 1053

第18章の40★麻也王子への愛が揺らぐ諒

「あ、坂口社長、ご挨拶が遅れて申し訳…」 そこに割り込んでくれたのは、いつしか戻っていた須藤だった。 彼は名刺を差し出して自己紹介をすると、改めて堅苦しい挨拶で諒を引き合わせてくれたので、 諒はもやもやしたものをを押し殺して、どうにか無言で頭を下げた。 すると坂口はすっかり表情が威厳ある厳しいものに変わった。どうやらビジネス用の顔になったらしい。 「これはご丁寧にどうも。 いや、今回は女の子だから、一日も早くデビューさせたいって、みんなでアセってね。 そちらにご迷惑かけてしまって申し訳ない。」 「とんでもないです。こちらこそいろいろとお世話になりまして、恐縮しております。」 それを聞いた坂口は、諒を見て意味ありげに微笑みながら、 「いやいや、こんなすごいアーティストがいるなんて、おたくが羨ましいですよ…」 と言い、それでは高橋社長によろしく…と言い置くと、忙しそうに、出口で待たせていた秘書らしき男性と帰っていった。 須藤は何事もなかったかのように、麻也の方を見やりながら、 「麻也さん、早く終わるといいですねえ…今日のリハのお弁当は、 遠藤兄弟のリクエストでジンギスカン弁当なんですよ…」 と、のんびりと言う。 それが諒には助かったが… (あんなのウソに決まってる…) でも逆に、いつもなら「何か言われませんでしたか? 」くらい言ってくる須藤が何も言わず、 触れてこないのもおかしい気がする… 「…須藤さん、ちょっと俺、帰るわ…」

ともだちにシェアしよう!