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第10章の6

「まずは、あそこのお得意な『100年に1人の美少女』アイドルへの 楽曲提供とテレビ共演。」 「はあ? 」 「あと、あそこの中堅どころのロックバンドに1曲だけ提供と、ギター参加。」 「はあ? 」 「あと、大物俳優の2世がボーカルの、ロックバンドの デビューアルバムの共同プロデュースと楽曲提供。」 「ええーっ!!! 」 「それを全部、麻也さんがやるの? 時間ないでしょ! 」 「ダメです。やらせません。」 怒る直人の次に、断言したのは諒だった。 「今回のアルバムは正念場なのに、ましてやプロデューサーは麻也さんなのに、 他の仕事、それもキャリアにならないような仕事はしてほしくないです。」 すると社長は、そんな諒が甘いと言わんばかりに、 「何が正念場だ! ミュージシャンなんて毎日が正念場なんだよっ! それに売れてるとはいえ、こんなにキャリアが短いウチにこんな大きなチャンスなんてまず来ないんだよ! 3つも大きいタイアップがあれば、大ヒット間違いなし!  東京ドームも近づくってものじゃないか。」 「だったらっ! なおのこと麻也さんのキャリアにくっだらない汚点をつけたくないです! 」 諒の言葉に、真樹も続けた。 「何かさあ、別の仕事にスイッチできませんかねえ。 バンド全体で楽曲提供とか…そりゃお相手は兄貴しか信頼できないし、 他のメンバーは使いたくないのかもしれないけど…」 麻也も本当に困ってしまった。

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