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第10章の11

すると真樹も直人も諒を説得にかかる。 「兄貴だってさ、ポップポップ言うけど、根っこはロックだから変なものは作らないぜ。」 「それに結局、アルバムには諒の曲が半分入るんだから、 ロック色は消そうったって消せないよ。」 しかし、諒は口をとがらせたまま、 「でも、ツアーで全部外されちゃったら終わりじゃん。」 そしてこうも言いだした。 「オリコン一位のために、100万枚セールスのために、そんなに音楽性を変えるの?  もう、変えて変えて、俺たちはどうなっちゃうの? 」 「でも、兄貴が売れセンを書いてるから、諒は少しは守られてるんじゃないの? 」 「守られて、ねえ…じゃあ、麻也さんは自分の音楽性を変えることに抵抗はないんですか? 」 他人行儀な諒の言葉に麻也はいつも通り優しく、 「うーん、俺の場合、もともとこういう路線なんだろうね。 まあちょっと違うかなって時も、売れる方を狙っちゃうし。 バンドの初期は仕方ないかな、って。」 「ふーん、優等生なんですねえ…」 と、目をそらしたまま、諒は皮肉っぽく言う。 そしてさらに、 「…夜とはエラい違いだなあ…」 おいおい、とみんなたしなめる。 麻也を気にして社長が余計なことを言う。 「諒、それはマナー違反だぞ。 仕事で結果を出してくれれば、プライベートは自由だろうが。 大人なんだし。」

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